ラジオ体操の音楽が流れ始める 

団地前の広場で 子供も大人も みんなでラジオ体操

みんなには夢があったから

みんなで体を動かした 朝日に向かって 何かを呼び寄せるように



新しい時代へ 



高度成長期の記憶は続くよ

今思えば、あれは祝詞だったね、と、神主さんが言う

最強の呪文を みんなで全身全霊で唱えていた 叶わぬはずがない


今はみんな、どんな夢を見ているのかな


満たされた世界へ

高度成長期の匂い


いつか親父が言った
「ラジオ体操しなくなったら日本は終わりだあ」




夢がなくなった かつての朝というものもなくなった




ここにあるのは意味のない朝だけ やがてこの朝も死ぬだろう

あっち側の世界では まだ白いシャツを着た子供たちが元気にラジオ体操している 教えてやりたい

こっちへ来るなと

もうここには未来がない 希望もない


東京  の虚空 

誰も目を開かぬ かつての全てが墓標となった


墓に咲く花もなく 魂すらも住まぬ跡地となった




音のない 廃墟となった団地群の真ん中で 一人、大音量でラジオ体操する


灰色の世界 記憶には色がある


ここに何かを、置き去りにした     

 振り向くと



エプロンをつけた母が 後ろに立っていた